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〈船の名前に興味がありますか?〉

 最近はなぜか「大和ブーム」が起きているようです。「男たちの大和」という映画が最近公開され、その悲壮な最期の出撃模様をご存知の方もいると思います が、この「大和」最後の出撃時に随伴した他の艦艇の名前を知っている人はどれだけいるでしょうか。なにかにつけ「大和」ばかり採り上げられますが、その周 りで沈んでいった艦もたくさんいるのです。昭和20年4月6日に出撃した水上特攻隊を構成するのは、戦艦「大和」、軽巡洋艦「矢矧」、駆逐艦「冬月」「涼 月」「雪風」「濱風」「磯風」「霞」「初霜」「朝霜」の10隻です。日本の戦闘艦には国、山、川の名前などが付けられますが、駆逐艦には上に示すように、 天気・気象・季節・暦に関するような名前が付けられます。この他に「夕霧」「秋雲」「白露」「綾波」などという艦もあるのですよ。戦闘用の艦としてはずい ぶん優しげな名前ではありますが、良い名前だと思いませんか?いかにも日本的な感性豊かな響きで、月、風、波、霜、霧といったものにこれだけ多様な感覚を 持っているのは世界中でもそう多くはないと思います。

これらの名前はやはり日本人の琴線に触れる名前なのか、船だけでなく特急列車の名前にもなっています。三宮駅に、昼12時頃か夕方6時頃にいると、ディー ゼルの濃い排気を吐きながら轟音と共に現れる特急列車がありますが、あれは「はまかぜ」と言います。以前は今よりもずっと多くの特急列車や寝台列車が運行 されていましたが、それらに付けられていた名前は、艦艇の名前と重複するものが多く、ひょっとしてそれらを基につけたのかなどと勝手に想像しております。

ところで戦艦「大和」には同型艦である「武蔵」が存在することを知っていますか。これもなにかにつけて「大和」ばかりが騒がれることの一例で、「大 和」と同じくらいの壮絶な戦いの後に沈んだにもかかわらず、知っている人は「大和」に比べて圧倒的に少ないと思います。(正確に言うと3番艦「信濃」もあ るのですが、航空母艦に改造された上、手抜き工事と訓練不足が重なり、完成後何と10日で横須賀から呉に回航する途中に沈んでしまいました。)「武蔵(ム サシ)」もなかなかいい響きだと思いませんか。たしかに宇宙戦艦「ムサシ」にするのはやや無理がありますが、「大和(ヤマト)」よりも悲涼な感じで、戦闘 艦にふさわしい名前のような気がします。吉村昭氏の小説「戦艦武蔵」の中では、『華やかな豊かさには欠けるが、武蔵野を野分が走るような荒々しい印象があ る』と述べられています。やはりいい名前です。