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「カオスをみる」

ゲスト:桑村 雅隆さん(神戸大学 発達科学部)
場所:神戸酒心館 ホール「豊明蔵」
2006年7月29日

開催風景 桑村さんから「カオス」について「日常的に見掛ける現象の中には,ルールがわかっているにもかかわらず,予測することが難しいものがたくさんありま す.それらは,混沌や無秩序という意味を持つカオスと呼ばれています」という説明が行われてから,実際に「三重振り子」を使った実験が始まりました.

三重振り子は,柱時計の振り子が三個連なっているもので,全体が回転しながら,二個目,三個目の振り子がその中で更に回転するような動きをします. 振り子が一個だけの場合,柱時計にも利用されるように予測可能な単調な動きをしますが,二重,三重となるに連れて複雑な動きをしていきます.当日は,参加 者も三重振り子に触れ,動かすことで,その複雑な動きを体験することができました.実に,複雑で予測が付かないような動きをしていました.

この三重振り子の実験の後,振り子の動きを微分方程式で記述したときに,位置とか速度などを表す変数の数が,3個以上でカオスになるという説明が行 われました.実際,二重振り子や三重振り子の動きは予測が付くとは思えないほどの複雑さで,カオスを見ている気分にさせてくれます.

その後,今回のサイエンスカフェでは2時間を超えて開催する予定だったこともあり,事前にインターネットでカオスについて調べてきた方,テレビなどからカオスや複雑系に関して興味を持っていた方を中心に,次のようなトピックに関する熱心な意見交換が行われました.

(1) 離散系のカオス,連続系のカオス
(2) 複雑系とカオスの違い
(3) バタフライ効果とは何か
(4) 「予測できない」とは何か

ファシリテータとして,この意見交換に関する補足説明をしておきます.

数学の方程式が作れて,その方程式が解けているのに,予測できないのは何故 なのか,非常に単純で素朴な質問です.これは測定誤差などに代表される, 「必ずしも正確な数値を扱えないこと」と,カオスの性質のひとつである, 「初期状態の僅かな変化で将来が大きく変化する可能性」を組み合わせると理 解できます.つまり,日常生活においては完全に無視できるような僅かな誤差 なのに,カオスは初期状態の僅かな変化に敏感なので,方程式の解に沿って将 来を予測しても,本当に予測したかった将来ではない,違う将来を計算してい ることになってしまうわけです.逆に,予測できる状態というのは,僅かな誤 差であれば,誤差を含んで計算した将来も本当に予測したかった将来も,大き く違わないということです.

バタフライ効果は,この初期状態に敏感であるカオスの性質を表したもので, 地球の大気全体から考えれば蝶の羽ばたきは僅かな誤差でしかありませんが, 遠い将来の予測に関しては必ずしも無視できるとは言えない,ことを模してい ます. (長坂)