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「紙おむつや砂漠の緑化に ―高吸水性ポリマー物語―」

ゲスト:下村 忠生さん((株)日本触媒 技術顧問)
場所:音楽ホール&ギャラリー 里夢(さとむ)
2007年4月7日
当日の様子 scicafe29polymer-1

講師の下村氏は日本触媒技術顧問の傍ら、大阪大学の産学連携教授、東京大、京都大、お茶水女子大、京都工芸繊維大等多数の大学の特別講義を担当されているので、話の導入(いわゆる「つかみ」)が上手い。最初に高吸水性ポリマーの見本を配布し、参加者自身に吸水のテストをさせることにより、ポリマーへの興味と参加者同士の親密感を一気に高めた。それに伴ってレクチャー中やその後の参加者からの質問や提案の多さは類を見ないものであった。

氏の強みは本ポリマーの発見から生産、規格達成、実用化、応用研究まで熟知していることである。筆者は高吸水性ポリマーはこんにゃくやゼリーのようなものだと思っていたが、実用上の吸水性を高めるためや、吸水した後も形を保つために、高分子化学的製法で、粒子に特殊な加工を加えていることを初めて知った。

世界最大のユーザである米国のP社に売り込むために出張した際、同社の要求する厳しい規格に適合した時のエピソードや、塩分を含む尿を吸収する樹脂の開発や危機を何度も乗り越えたのはまさに「プロジェクトX」である。「ポリマーの吸水性が強すぎて、砂漠の緑化のような用途には植物が水を利用できなくて不向きではないか?」という参加者の指摘にも「想定内質問」として軽快に答えられた。

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高吸水のメカニズムも「物理化学的」知識で簡単に説明できるようなものでないことも知ることができた。奇想天外な使い方が見つかったら面白いのにと思った。

[文責:岡田惇也]