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「地球温暖化問題を考える」

ゲスト:浅岡美恵さん(弁護士、環境NPO気候ネットワーク代表),石川雅紀さん (神戸大学大学院経済学研究科),盛山正仁さん(衆議院議員)
場所:兵庫県立美術館・原田の森ギャラリー別館401講義室
2006年1月28日

第一部 ゲスト講演

浅岡美恵さんからは、「地球温暖化と市民の取り組み」というタイトルで、2005年暮れにモントリオールで行われた気候変動に関する国際会議についての報 告や、家庭のエネルギー消費の見直しについて、温暖化問題に対する政治レベルでの対策の重要性のお話をしていただきました。石川雅紀さんには、「なぜ温室 効果ガスの大幅削減が必要か―低炭素経済への転換―」として、地球シミュレーターを用いた研究の紹介をしていただきました。また、環境と経済のバランスに ついて、両者発展の相互関係についてお話していただきました。最後に、盛山正仁さんからは、二酸化炭素排出量について、各国の実態や取り組みについて報告 していただきました。京都議定書に関する問題点や、発展途上国が抱える問題について話していただきました。

第二部 参加者とゲストによる自由討論

鉄鋼業にお勤めの参加者から鉄鋼製造過程での二酸化炭素削減対策について詳しく報告いただきました。日本だけでなく、近年産業の発展が著しい中国で の実情についても話が出ました。京都議定書の問題点に関する意見が多くあげられました。特に、アメリカの京都議定書不参加についてや各国間の関係が問題と なりました。その中でも、「排出権取引」についての質問が参加者から多くあげられ、この制度に関する解説が行われました。排出権取引は、賛否両論の意見が 飛び交いました。
「本当に地球温暖化は進んでいるのか」「温暖化の原因は二酸化炭素なのか」など温暖化問題の根本に迫る疑問が多くなげかけられ、議論は大変盛り上がりました。

(討論の内容)

盛山さん:立場の違う国をまとめるにはどうすればよいか。お互いに妥協や協力が必要である。先進国だけではとうてい達成できない、途上国とタッグを組むとよい。目標をやぶると罰則をつけては。
浅岡さん:排出権取引について。クリーン開発メカニズム。先進国と途上国について。
宮川さん(神戸製鋼):パンフレットを配布、解説。日本ではコスト効率が悪い。日本の生産量を減らして中国を増やすのはナンセンス。APPに日本も賛同して参加。APPは京都議定書の代わりになるかもしれない。鉄鋼業でもさまざまな取り組みを行っている。
吉田さん:京都議定書の問題点は?
宮川さん:アメリカの不参加が最大の問題点。
浅岡さん:APPはアメリカから出された。アメリカはAPPを京都議定書の代わりではないといっている。鉄鋼業界だけはそろって情報開示を行わない。
宮川さん:将来、CO2を減らした生活を考えると利便性がなくなるのではないかと不安である。使うニーズがあるから、鉄は今の社会の中で必要だ。製鉄方法をかえていく。
浅岡さん:6%削減した生活はオイルショック以前ぐらいの生活である。新たに鉄をつくる必要はない、もう鉄はいっぱいある。
男性の方:温暖化がわれわれの生活にどう影響するかということを知りたい。
下村さん:意識改革すべきである。我慢よりも、生活水準を下げるという意識に改革。スローライフがよいのでないか。
石川さん:日本を含めた先進国の1人あたりの鉄鋼生産量はほぼ毎年上がっている。
宮川さん:日本はこれからスクラップを輸出する側になる。APPのように地域でキャップを決めても、世界の他の地域で鉄がつくられたなら、温暖化が進むのには変わりない。
野沢さん:このままいくと、我々の生活、人類がだめになる。一人一人ができることをしなければいけない。40年後はどうなりますか。
石川さん:シベリアで小麦がとれるようになるかもしれないが、北極の氷はとける。
堤防をつくれる国は公共事業が多くなる、というような経済の姿になるだろう。お金をだして堤防を作るというスタイルは健全ではないと思う。エネルギーと需要をさげる。現在の社会状況をかえないといけない。
渡邉さん:本当に地球温暖化自体がおこっているのだろうか。
環境問題って本当に大変なことだろうか。予想は非常に幅がある。
パラメーターのとりかたによって変わる。
温暖化によって異常気象がおこっているということは統計的に有意でない。
温暖化対策をするより、堤防を作るほうが安く上がるのでは?
蛯名さん:CO2が本当に温暖化の原因かは疑問であるという説もある。
井上さん:鉄でせいぜい100年、地球規模では何万年単位である。
野島さん:人類が優先され続けるとは限らない。循環と再生のサイクルの中でいきていくべき。鉄を作る必要はなく、日本に生えている木で家をつくればいい。アメリカのスタイルではだめ。
高田さん(国交省):堤防などの投資余力はそんなにない。教育が大切である。
下村さん:太陽エネルギーの範囲内で生きていこう。
石川さん:サイエンティストとしては地球温暖化は疑わしい。全員がCO2が原因、というのは危険なことである。
盛山さん:地球温暖化が進んでいるのは現実だ。政府として国民みんなで考えていくことが大切だ。生活水準をかえずにどうとりくむか。不公平感をなくして。国際交渉はとても難しい。
浅岡さん:科学的に不明確だけど対策はやっていかなければいけない。エネルギー消費がはるかに日本よりすすんでいる州アメリカにはたくさんある。よく科学を理解して、市民の側から対策を要求していきたい。

(今回の世話人の田中より)

様々な年代の50名あまりの皆さんにご参加いただき有難うございました。「地球温暖化問題」は実は専門家の間でもまだ色々と決着がついていない問題であ り、現在も学界レベルで激しい議論が闘わされています。この2月、3月にも東京を中心にいくつかのシンポジウムも開催されます。大きく「地球温暖化支持 派」と「懐疑派」に分かれますが、後者の立場からの意見を知りたい方は、例えば、
「環境危機をあおってはいけない」(ビョルン・ロンボルグ著、山形浩生訳、文藝春秋)
「地球温暖化-埋まってきたジグソーパズル」(伊藤公紀著、日本評論社)
「これからの環境論-つくられた危機を超えて」(渡辺正著、日本評論社)
などの本をご覧ください。一度の会合で議論が尽くせるはずもありませんので、これからも「サイエンスカフェ神戸」では関連した話題を取り上げて、皆さんからのご意見を募りたいと考えています。

以上