「おろし風ー六甲おろしと局地風のサイエンスー」
場 所: 神戸酒心館
日 時: 2007年12月22日(日) 16~18時
神戸地域の冬を、より一層厳しいものにしてくれる、名物「六甲おろし」。 風が山に当たると何が起こるのでしょう?どうして風下は強風になるのでしょう?
今回は、気象サイエンスカフェとの合同開催となりました。 海陸風や山谷風などの気象現象を研究されている里村雄彦さんをお招きし、 様々な写真と酒心館の雰囲気を味わいながら、「局地風」のメカニズムに ついて語り合いたいと思います。灘の銘酒も試飲できます。みなさま、 どうぞお気軽にご参加下さい。
広報を開始して3日で定員に達してしまった今回のカフェ.それほど話題の「魅力」が大きかったのでしょう.2007年最後のサイエンスカフェは,気象学会関西支部・関西気象予報士会が開催する「第1回気象サイエンスカフェ」との合同開催となりました.話題は京阪神地区での生活には馴染み深い「六甲おろしと局地風」.場所は久々の神戸酒心館です.当日は激しい雨にも負けず,話題とお酒(!)を楽しみに,みなさん集まってくださいました.
ゲストは京都大学の里村さん.まずは山に風があたると何が起こるか?から話はスタート.「強い風が山を吹き超えると,風下側で下降気流に,その先では反動で(浮力を復元力として)上昇気流となり,,,と,これが連なって大気の波ができます(山岳波).もし空気が十分湿潤だと,上昇気流のところで雲が発生し,雲の波が観測されますよ.」と何枚かの雲の写真もご紹介下さいました.特に冬の日本海付近の雲の縞模様(衛星写真)は,天気予報でもお馴染みの画像.また,山の風下にできる雲の波列(ロール雲)の写真は,実際に六甲でご覧になった方も多いようです.うんうんとうなずきながら,ゲストの話に耳を傾ける参加者の姿が印象的でした.
この「波」は大気が連続であるために上空まで伝播していきますが,その伝播方向や波の空間間隔(波長)は山の高さや大気の安定度に依存するということ,また非常に強いので,航空機事故を引き起こしやすく,過去の事例などもご紹介いただきました.
理論的な話が続いたので,このあたりで最初の語らいへ.神戸の空を見ていて思うこと,を参加者に自由に語っていただきました.
一方,今日の会場である酒心館さんからは,六甲の風を利用して日本酒作りをしていたことを紹介していただきました.その昔,蒸したお米(麹)を冷やしたり,雑菌の繁殖を抑えたりするために,酒蔵の北側に窓を作り,いわゆる「六甲おろし」の風を取り入れていたのだそうです.
これに対して参加者からは「どうして灘や西宮には酒蔵があるのに,芦屋付近にはないのか? もしかして芦屋付近は灘に比べて風が吹きおろしにくい?」との質問が!「う~ん,確かに,芦屋付近には酒蔵がないですねぇ...調べてきます.」と酒心館スタッフの大磯さん.実はこれ,地形(気象)的な問題ではなく,酒蔵を作る場所にその当時の政治的な判断が入ったからだそうです(一同納得!).大磯さん,ありがとうございました!
今回は運営スタッフに気象予報士や管区気象台にお勤めの「専門家」が数多くいたため,休憩を含む後半は,その方々を囲んでの,各テーブル毎での語らいからスタートしました.利き酒もお楽しみいただきながら,じっくりと話ができたのではないかと思います.
そして最後は六甲山系を模した,山岳波(いわゆる六甲颪)の数値実験を里村さんからご紹介.
クイズも入り,和やかな雰囲気となりました.
会場からは「『六甲颪はどこで吹いているのか?』とよく聞かれる.現実にはどれを六甲颪と呼ぶべきなのか...?」という声も.これに対し「甲子園で吹いているのが六甲颪」と,別の参加者からの銘(?)解答に一同笑いが.その後,議論は続き (明確な結論は出ませんでしたが),冬の,まさしくおろし風が吹く時期に,データを見て,話を聞いて,生活の中での経験とサイエンスとを照らし合わせて盛り上がった2時間でした.
(文責:橋口典子)