「細胞から病気を診る -病理学でわかることー」
診断のためには標本を作成し、組織化学、免疫組織化学、電子顕微鏡などの 様々な技術を駆使しながら、病気を特定していきます。最近では分子レベルでの 解析も盛んで、分子病理学という新しい分野もうまれています。
病気の本体を見極め、治療に結びつけるためにはとても重要な「病理学」。 実際には、種々の技術をどのように駆使して診断していくのでしょうか? また、どういった課題があるのでしょうか?
今回は病理学について、研究、実用両方の側面から皆さんと語り合いたいと思います。 みなさまのご参加をお待ちしてます。
ゲストは形態学がご専門の前田光代さん。前田さんは、体の構造のことなら人間でも動物でも、頭のてっぺんから足の先までくまなく説明できてしまいます。今回は細胞から病気を診る、「病理学の世界」についてお話していただきました。
病理学は、病(やまい)の理(ことわり)を読み解く学問。病気で異常になった部分をまずは目で見て、次にその細胞を切り取り顕微鏡でさらに詳しく見て、どのような変化があるのか、どのような状態なのか、原因は何か、などを論理的に読み解いていく学問です。実験病理学と人体病理学に分けられます。
病理診断、細胞診断の説明では、実際の写真を示しながら、それぞれの細胞がどういう状態にあるのかを見ていきました。 病理診断では細胞が癌化していく様子を見せていただきました。正常な細胞は核がキュッと小さくまとまっていて細胞質が大きく、美しい形をしています。しかし細胞が癌化すると、核がだんだん大きくなり、細胞質が小さくなっていきます。形も大きさもバラバラの細胞になってしまいます。 細胞診断では、尿の細胞診をご紹介くださいました。尿の中には、体内で剥がれた細胞が含まれています。人の細胞以外に細菌や酵母様真菌、ダニや毛じらみ、さらには外部から混入した昆虫の鱗片や花粉などが観察されるそうです。
健康に関わる内容というだけあって、参加者のみなさんからたくさん質問が出ました。どの質問も、よくある日常の出来事に例えながら、分かりやすく解説してくださいました。“この世の中の出来事と、体の中で起こっていることって何だか似ているのだな”と思うと、医学を身近に感じることができました。
最後に「こういう仕事をやっていて,人間に対するものの見方が変わりましたか?」という質問がありました。「偉そうにしている人も、そうでない人も、皮一枚めくって体の中をみたらみんないっしょやなと思います。」というお答がとても印象的でした。
(文責:貞本)