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「木質バイオマスってなあに?」

ゲスト: 那須 清吾 さん(高知工科大学社会マネジメント研究所)
久保 浩計 さん(JA土佐あき芸西支部園芸研究会赤ピーマン部会)
日 時: 2008年8月31日(日)14時から16時30分
場 所: 神戸酒心館ホール「豊明蔵」
開催の記録
今回は新しいエネルギーの可能性として「バイオマス燃料」の研究に焦点を あてました。

高騰する重油に依存し、衰退する林業・農業を抱えている高知県では「木質 バイオマス」を用いた地域経済が循環する可能性を探っています。

「バイオマス燃料」「木質バイオマス」とはどんなものなのでしょうか? そして、新しいエネルギーを地域で活用していくには、どんな難しさが あるのでしょうか?

実践例をご紹介いただきながら、みなさまと語りあいたいと思います。
当日の様子


夏休みさいごの日、神戸の酒蔵にてサイエンスカフェを開催しました。ゲストは高知工科大学の那須さんとビニールハウス栽培にてピーマン・赤ピーマンを作られている久保さん。

まず、高知県の現状についてお話がありました。現在、他の件でも同様の悩みを抱えているように高知県でも若い人は県外に流出してしまっています。ただ愛着もあるので、「都会の収入の三分の一が得られれば戻ることも考えるのに」といった意見などもあるそうです。そのくらい、都市部に比べて所得も低く、失業率も高い状態があります。そこに、高騰を続ける化石燃料に依存をしている、衰退気味である林業や農業がさらに圧迫するという構造になっています。

そこで、那須さんたちは、新たなエネルギーに着目し、樹木が成長する範囲の中で樹木をエネルギー資源として地域の農業に利用し、地域経済が循環する可能性について探っています。具体的には、ほったらかしになった森林を活用して、樹木の伐採・運搬を通して木質ペレットに加工・配送し、作物の栽培という一連の研究開発の過程について写真を交えて流れを説明されました。

第54回 サイエンスカフェ神戸 参加者からは「木質ペレットにするにはどんな木が向いているのですか?」という質問や、「高槻市にもペレット工場がありますが3割の稼働率で、木質バイオマスはこれからの社会の中でどのくらいのエネルギーシェアがありそうなのですか?」という質問もありました。前者の質問に対しては、「現在は広葉樹で調べているので、主にけやきなどで作っています」という回答を。後者の質問については、「大きなエネルギーをまかなえる仕組みというよりは、ひとつの地域がエネルギーそのものも、ある経営システムの中でまわっていくような補完的な役割をするものであって、化石燃料の代替になるとは考えていません」というコメントでした。また、「木質バイオマスを作る上で山の全伐を行うことで、生態系に影響はないのですか?」という質問に対しては、参加されていた生態系について勉強をしている学生さんから「適度なかく乱は必要」という補足があり、ゲスト以外の方々から質問に対するコメントが出されるなど、活発な雰囲気でした。

ゲストの誠実にお話しをしようとする姿と会場の雰囲気と共に、お茶だけでなくきき酒もたのしみながらというスタイルの相乗効果のためか、終始質問やコメントなどが飛び交うにぎやかに時間が過ぎました。アンケートには、「予想したような内容が中心ではなかったですが、とても実際的な視点での話だったため、興味深い話が聞けた」「今回のようなテーマで別の角度から、環境問題を通じた地域活性化について話しを聞いてみたい」などのご意見がありました。また、ゲストの久保さんはこのような機会は初めてだったので、とても緊張をされたそうですが、「都会の人の意見を聞けたことがよかったです」と感想を残されました。今年も木質バイオマスを使って12月頃から久保さんはピーマン栽培の実験に取り組みます。また別の機会に続きのお話しをする場が設けられればと思っています。

今回は、サイエンスカフェ神戸の活動に科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センターが共催した形で行いました。このような主旨に対しても「今後の拡がりを楽しみにしています。今日の盛り上がりにとても感動しました」というご意見をいただきました。

サイエンスカフェ神戸は、不定期ですが頻繁に今後も開催されますので、どうぞご関心をお持ちの方はこちらのホームページをご覧ください。

(文・写真:サイエンスカフェ神戸、JST社会技術研究開発センター)