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「里山の新しい物語をつくる」

ゲスト: 奥 敬一 さん(独立行政法人森林総合研究所関西支所)
日 時: 2008年12月13日(日)14時から16時00分
場 所: 神戸酒心館
開催の記録
ポスター(600kB, PDF)


今回は、独立行政法人森林総合研究所関西支所の奥敬一さんに「里山の新しい物語をつくる」というお話をうかがいました。

 奥さんは14年間、里山と人との「関わり」を研究されています。昔から伝わる里山の伝統的な利用形態を、実際の里山の植物を紹介しながら解説いただき、里山の未来をどのように切り開くかについてお話ししていただきました。

 里山とは、畑や田んぼの中に茅葺き屋根が並び、裏山に雑木林が広がる、かつては普通に見られた環境です。人々は田んぼや畑で稲や野菜を育て、裏山の雑木林から薪をとり、炭を焼き燃料としていました。山の一部は草原状に維持して、肥料や茅葺きの材料をとりました。山には人の生活のための道がいくつもはしり、イノシシやシカが里におりて畑を荒らすことはほとんどありませんでした。現代になってライフスタイルが変化したため、薪や炭は使わなくなり、茅葺きの家には住まなくなりました。山の利用価値はなくなり、林は手入れはされずに荒れはて、人が入らなくなった山から獣がおりてくるようになりました。自然を無視した都市型の生活が続けば、いずれ私たちの生活が立ち行かなくなることは想像に難くないでしょう。

 私たちが、現代のライフスタイルを昔のような生活に変えることは難しいことです。ならば私たちの生活の中で、里山をふたたび利用する方法を探っていくことが、里山を維持していくために有効です。奥さんには、具体的な里山活用方法もお話していただきました。里山を環境教育の場として利用することは広がりつつあるようです。また、山の木材を燃料として利用する取り組みも進んでいます。薪ストーブやペレットなどの需要がたかまれば、山を定期的に管理することにつながり、かつての風景を取り戻すことができるかもしれません。

 里山は、まったくの自然ではなく、人がにぎわう街でもありません。自然界の資源を利用して生活しなければならないことを実感するための入り口です。里山は、持続可能な社会を築いていく上で失ってはいけない場所だということが、今回のお話でわかりました。

(文:サイエンスカフェ神戸)