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「持続可能な男と女」

ゲスト: 高見 泰興 さん(神戸大学大学院人間環境学研究科)
伊田 広行 さん(立命館大学)
日 時: 2009年2月26日(木)18時から20時
場 所: 神戸にしむら珈琲店・御影店
開催案内文の記録
ポスター(485kB, PDF)

-性の起源と進化- 人間にはなぜ男と女がいるのでしょうか。そしてなぜ、男と女は違うので しょうか。男女の生物としての違いを理解することは、男女の社会的格差 を解消するためにも役立つのではないかと思います。そこで生物進化の 観点から、二つの性が生まれ、異なる特徴をもつに至った経緯について 紹介したいと思います。

-持続可能な男と女- 男女の脳の差異の研究や、生物学のオスメスの行動の違いの研究から、 人間の男女の違いも説明できるというような議論がよくあります。でもはた してそうでしょうか?人間社会の現実の水準での男女平等の発想とはど のようなことなのか、考えてみたいと思います。

【当日の様子】

今回は、神戸大学の高見泰興 さん と、立命館大学の伊田広行さんを ゲストに迎えました。 高見さんからは、生物進化の観点から、二つの性が生まれ、異なる特徴を もつに至った経緯について紹介していただき、伊田さんからは、人間社会の 現実の水準での男女平等の発想とはどのようなものなのかをお話しいただ きながら、ゲストと参加者との活発な議論の場となりました。

 まずは高見さんから、「性の起源と進化」というテーマで話をしていただきました。 進化とは?なぜ性があるのか?そしてなぜ二つの性が違うのか? 進化とは、生物の遺伝的組成が世代を経るにつれて変化することです。性があると、次世代 個体の遺伝子の組み合わせがさまざまになり、バラエティに富んだ子孫ができます。少しづつ 違う能力を持った子孫を生むことで、環境変動が起こった場合、いずれかの個体が生き延びる 可能性が増えます。そのため、多くの生物が二つの性による繁殖システムを持っていると考えら れています。また、性の違いは配偶子の大きさの違いによる「雄あまり状況」をつくりだし、性淘汰を 通じて生じたのだそうです。それから話は「人間の社会行動:生まれか育ちか」に移り、「ヒトは生物 なので、その性質は遺伝子と環境の両方に左右されるのだ」、というところでお話をまとめていただきました。

高見さんのお話の最後の部分とからめて、二人目のゲストである伊田さんがバトンタッチでお話を 続けられました。まず、人間の男女における違いは非常に微妙なものであり、人間の活動は生殖が すべてではない、というところからお話は始まります。少し前にテレビで放送されたNHKスペシャル 『女と男ー最新科学が読み解く性』に対して、自然科学の力を使った本質主義的きめつけによる男女 役割のこじつけ的な説明であると批判されました。人間の「生まれ」と「育ち」は相互に影響しており、 生物学的要因があるのは当然で、それが「どのように」「どこまで」影響しているかということが問題なのです。 そして話はジェンダー平等論へと移り、多様な人の多様なあり方が尊重されるべきだということをお話されました。

 誰もが当事者である「性」の話題ということもあり、参加者の方々からも、いろいろな思いや意見を率直に 出していただき、活発な語りの空間になりました。今回のテーマ「持続可能な男と女」では、「性」は生殖と いう目的だけにとどまらず、相互に尊重してかかわり合っていく重要性を学びました。今回のESDカフェでは、 今まで考えたことがなかった、自分の中にある性に関する偏見や思い込みに気づくきっかけがあったり、 また、自分の経験を言葉にして共有することによって、新たな気づきを見いだした方もいたのではないでしょうか。 そのような気づきが、「語り」や「対話」の中から生み出されるということが、ESDカフェの醍醐味かもしれません。 今回は、語らいに十分時間をとることができず、参加者のみなさんも、まだまだ話し足りないという方もいらっしゃいましたが、 これをきっかけに、身近な人たちと語らっていただくことが、持続可能な社会づくりの第一歩となるのではないかと期待しています。

(文:西村)