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「植物のからだづくりはどうやって決まるのか?」

ゲスト: 深城 英弘さん (神戸大学大学院理学研究科)
日時: 2009年7月25日(土) 14:00~16:00
会場:  UCCカフェ コンフォート 神戸市庁舎店
開催案内文の記録

ポスター(590KB, PDF)

植物のからだは、根、茎、葉、花といったごく少数の器官からできています。
また、植物は私たち動物と異なり、一度芽生えた場所から移動できないため、
周りの環境にうまく適応して生きていくしくみを持っています。
今回は、「植物のからだづくり」について、「花のつくり」が決まるメカニ
ズムを中心に、シロイヌナズナというアブラナ科の植物を使った研究の最先
端を見ていきましょう。

【当日の様子】

今回のカフェでは、参加者の皆さんとゲストの方との双方向コミュニケーションをより深めるため、深城さんのご協力により対談形式にて開催しました。

今回のお話は、植物のからだづくりのメカニズムについて、シロイヌナズナを用いた研究を紹介していただきました。 まずは、植物の基礎的なことから話が始まりました。植物の基本的な構造は、根・茎・葉・花があり、また、植物には被子植物・裸子植物といった分類があります。対談方式なので、ファシリテーターがちょっとずつ質問したり、相づちをうちながら進みます。これが功を奏してか、途中、参加者からたくさんの質問がでました。「動物と植物の違いはなにか?」「裸子植物は具体的にどんな名前の植物?」などなど。

つづいて、モデル植物シロイヌナズナの特徴についてのお話です。シロイヌナズナはアブラナ科の小さい植物で、世代のサイクルが早く、タネをまいてから2ヶ月で次世代のタネができます。実験室での飼育が容易で、ゲノムサイズが小さく、2000年には全ゲノム配列が解読されています。実験材料として扱いやすく、世界中で研究されているので、どんどんデータが蓄積され、さらに研究が進むーといった良い循環がおきています。それが「モデル」植物たるゆえんです。 シロイヌナズナのいろんな突然変異体ー奇妙な花、奇妙な葉、奇妙な根ーを写真で見せていただきました。「突然変異体はどうやってつくるのか?」「シロイヌナズナはこの辺にあるのか?」など、参加者の素朴な疑問を交えつつ話はすすみました。

途中、UCCカフェコンフォートの美味しいコーヒーとケーキをいただきながら少し休憩。 いつも以上の双方向コミュニケーションに会場は盛り上がり、少し時間が押してしまいました。

最後に、花の設計図ABCモデルについて、急ぎ足でしたが、説明していただきました。花は、がく片・花弁・雄しべ・雌しべという器官でできています。シロイヌナズナの花の突然変異体から、花の器官を決定するA, B, Cという3つのクラスの遺伝子があることがわかったそうです。Aクラスはがく片と花弁の形づくりに、Bクラスは花弁と雄しべ、Cクラスは雄しべと雌しべの形づくりにそれぞれ働きます。たとえば、Aクラスの遺伝子が変異すると、雌しべと雄しべだけの花ができます。Cクラスの遺伝子が変異すると、がく片と花弁だけの花ができます。A, B, Cすべてが変異した花は、すべての器官が葉のようになります。かつて、ゲーテ(18-19世紀のドイツの詩人・科学者)は、「花は葉のような基本的な器官が変形してできたものである」と著書に記しています。現代の科学で、そのメカニズムが明らかになり、ゲーテの言ったことは正しいことが証明されました。 変異体の不思議な花の写真をみながら、参加者の皆さんも複雑でしかし単純なメカニズムに、自然の奥深さを実感されたのではないでしょうか。

(文・神戸大学サイエンスショップ)