本ウェブサイトは2012年4月下旬をもって閉鎖いたしました。このページに掲載している内容は閉鎖時点のものです。今後は,移設先のサイト(2012年4月下旬より有効)をご覧下さい。[2012年4月]

「但馬地方に影響する台風とは?」

ゲスト:榎原資嗣さん(気象庁豊岡測候所 気象解説官)
場所:コウノトリ本舗(兵庫県豊岡市)
2007年9月17日
開催案内文の記録

今回は、豊岡測候所で空を見守ってこられた榎原資嗣さんをゲストに お迎えし、豊岡豪雨や台風の話題を中心に、但馬の気象現象について みなさんで語り合いたいと思います。みなさまどうぞお気軽にご参加ください。

なお、気象庁豊岡測候所は大正6年に創設され、90年にわたって但馬 地方の空を見続けてきましたが、残念ながら、観測自動化に伴い、今年 9月末で閉鎖となります。

ポスター(PDF)

主催:大学コンソーシアムひょうご神戸, 財団法人ひょうご科学技術協会
協力:サイエンスカフェ神戸, コウノトリ本舗
後援: 兵庫県豊岡市


当日の様子

hyogo_2photo1.jpg
開催日が近づくにつれ,会場の但馬地方に台風11号が近づいていました.「台風の話題だけにもしや..?」と心配していましたが,当日は日本海側に抜けて温帯低気圧に. 雨が降り続く中ではありましたが,コウノトリ本舗のカフェスペースには当日参加を含む,36名もの方が集まり,豊岡でのサイエンスカフェがスタートしました.

ゲストは気象庁豊岡測候所の榎原さん.9月末で閉鎖になる豊岡測候所ですが,お忙しいところ,話題提供にご参加くださいました.

最初の話題は台風の構造について. 「熱帯低気圧と温帯低気圧は,発生した場所が違うのではなく,構造が違うのです.」 寒気と暖気がぶつかりあってできる温帯低気圧と,暖かく湿った空気が上昇してできる熱帯低気圧の違いから説明が始まりました.普段,天気予報で良く聞くこの言葉ですが,参加者の中には,この違いを始めて知った方も多かったようです.

hyogo_2photo2.jpg コーヒーブレイクを挟んで,話題は平成16年の台風23号へ.豊岡は,この台風によって円山川が増水・決壊し,甚大な被害を経験しています.それだけに皆さん,真剣な表情にかわっていきました.榎原さんによると,但馬地方では,円山川(豊岡盆地)の東側を台風が通過した場合に,集中豪雨が起こりやすいとのこと.台風の北側の冷たい空気と台風の暖かい空気とがぶつかって雨となりますが,それが豊岡盆地の東側の山地(地形的な影響)によって強化されると述べておられました.また,円山川は,河口付近で10000分の1(10kmで約1m)の高低差しかないため,それほど多くない降水量(150~200mm/日)でも河川が氾濫しやすい理由として挙げられるそうです.

会場からは,「反時計周りに吹き込む台風の風が円山川の流れを悪くするのでは?」というサイエンスに対する意見はもちろん,消防団で活動された方や,豊岡に長くお住まいの方などから当時の経験を語っていただきました.カフェから見える町を指差し,「そのあたりまで水で埋まりました」という話には,報道でしか被害を知らない私としては,水害の恐ろしさを再認識.実は参加者であった豊岡市長さん(!)の言葉にもありましたが,「こういった経験をきちんと科学的に分析して,その知を地域のみなさんと共有し,次にどう生かすか,どう対策をとるか」,というプロセスにつなげていくことこそが大事であり,これからの科学者の役割ではないかと感じました.少なくとも,豊岡のみなさまには,これからの台風情報は強度だけでなく,「進路(円山川のどちらをとおるか?)」にもご注目いただけるのではないかと思います.

最後に会場から「豊岡の思い出は?」と聞かれ,「温泉にはよく行きました (^^)」とお答えになった榎原さんのやさしい笑顔が印象的でした.

(文責:橋口典子)