本ウェブサイトは2012年4月下旬をもって閉鎖いたしました。このページに掲載している内容は閉鎖時点のものです。今後は,移設先のサイト(2012年4月下旬より有効)をご覧下さい。[2012年4月]

知ろう 語ろう スーパーコンピュータと科学

ゲスト:佐藤 哲也 さん(兵庫県立大学)
    西川 武志 さん(東京工業大学)
    水野 義之 さん(京都女子大学)
場所:レアルプリンセサ・リカルディーナ磯上邸
開催日:2009年1月31日
開催案内文の記録
「世界一じゃないといけないんですか?」-事業仕分けで高い関心を
集めた次世代スーパーコンピュータが神戸のポートアイランドにつくられます。
元地球シミュレータセンター長の佐藤哲也さんをはじめ3人のゲストを お招きし(豪華!)、分かりやすく話題・情報提供をいただいて、市民のみなさん とスパコンや科学技術の進め方について語り合いたいと思います。

ポスター(520KB, PDF)

当日の様子

サイエンスニュース

今回はスーパーコンピュータがテーマ。事業仕分けで話題になったこともあり、市民のみなさんの関心も高く、満員御礼での開催となりました。3人のゲストの方々にはそれぞれの立場で、「スパコンとは何か?」、「何がすごいのか?」、「何が出来るのか?」などについて分かりやすくお話いただきました。

兵庫県立大学の佐藤さん(元地球シミュレータセンター長)は、計算機を使う人は、「計算機を作る人」、「計算機を使って実験データなどを解析する人」(家庭の料理人)、「シミュレーション屋さん」(プロの料理人)の主に3種類に分けられ、各タイプの人たちとの交流の重要性を説かれました。また、東京工業大学の西川さんは、一昨年の金融危機で破綻したリーマンと破綻しなかったにゴールドマンの差は、実はスパコンを駆使したリスク管理の差だったとか、映画「アバター」や「ロードオブザリング」を作った映像スタジオは実はスパコン並みの計算機をもっているとか、科学の世界だけでなく様々な分野でコンピュータが大活躍している様子を紹介してくださいました。

さらに、「スパコンは本当に高いのか?」という問いには、京都女子大の水野さんが、巨大科学の中では規模が比較的小さい「スーパーカミオカンデ」や「すばる望遠鏡」などの費用とスパコンの予算を比較してくださいました。この数字を比べると、スパコンの総予算1200億円(2010年度予算227億円)は決して安くはありません。しかし、つい先日(2010年1月10日)フランスのソフトウェアエンジニアが、パソコンで円周率算出桁数の世界記録を更新した計算にかかった時間は約半年。西川さんによると、同じ計算が筑波大のT2K Tsukubaを使えばたった2日ですむとのこと。単純に換算すると、これまで10年かかっていた計算が1ヶ月あまりでできることになります。

時は金なり!このコストを高いと見るか低いと見るか判断はわかれますが、今回のスパコンがこれまで不可能だった、とてつもない計算を可能にすることは確かなようです。何しろ10年前のスパコンの1000倍も高速!研究者はスパコンを駆使したシミュレーションによって、初めて見える「別世界」を私たちに教えてくれることでしょう。重要なのは、その膨大なデータ(情報)を人間の知恵を使って社会にどう生かすか、ということ。最新のコンピュータを使うには、使う人間の知恵が一番重要、という当たり前?の結論に落ち着いたようです。

Q. 日本中の大学をつないで大型コンピュータを作ってはダメなのか?
A. そもそも性能が出ない。数十万から数万分の1のネットワーク速度しか遠隔接続では実現できない。無理に実現しようとしても経済的に割にあわない。

Q. SFの世界にどこまで追いついているか(ターミネーターからドラえもんまで)?特に人工知能など。
A. コンピュータとヒトは”考え方”が違う。
ヒトの”考え方”に、まだ”科学”は追いついていない。

Q. 量子コンピュータの現状は?
A. 今のPCの性能の1/100万が現状。実用化はまだまだ先。

Q. 最新技術で昔の生活の知恵を解明できる?
A. 伝統的知恵を情報でどう表現するかというモデル化の問題。
「何を計算したいのか?」「どう現代の社会にfeed back するのか?」、人間の知恵が必要。

(文・神戸大学サイエンスショップ)